藤代マロ自選二十句
黙々と作法の通り初日の出
少年の微熱惑わす冬の月
秋桜や太宰の首をすげかえる
ぬばたまの何の冥府を見返すか
びるまから空が押される春の風
化粧していて丸い地球につくしんぼ
弟と素足重なり待ちぼうけ
同じ顔赤くなりつつ金魚玉
ラムネ飲み鋭角鈍角考える
鈴虫や疲れてきたら代わろうか
(以上「俳句スクエア第二集)
木犀の回る雫の中にいる
手に竜胆天空の柵越えにけり
我生きる焚火が煙を放ちをり
にんにくの葉っぱとなって人をみる
花明り明りとなりしはかなさよ
ぼんやりがほうほうと鳴る梅雨の朝
半熟の卵崩れる梅雨の中
心太人と人とに間あり
網膜で眠ってしまう夏の月
あかねさすぽつりぽつりと銀河かな
(以上 俳句スクエア第三集)