小林檀自選二十句

 

はるともし布の縫い目のトテチテ

花種を巻き終へし指放熱す

紅梅や角から溶ける金平糖

くくたちの出しそびれたる手紙か

星よりの水をたまはり夜濯ぎす

かりがねや辛子の壜を伏せておく

出来かけの人形座る寒さかな

ひとひらの雪落ちてくるあみだく

(以上「俳句スクエア第一集〜三集抄出)

 

陽の匂ひ連れてきさうな春の雪

F音の笛吹きケトル森芽吹く

七曜の真ん中そよぐ菫草

東風吹かば水のあふるる水の星

囀りやブリキの缶の木綿糸

麦青む塵一つなき天の国

(以上 角川書店「俳句」平成17年5月号掲載作品より)

 

新緑や一糸まとはぬゆで卵

孤児に似て白南風の中物を干す

夕虹に雨が芽生えてしまひけり

かな文字の生まれ始めの紅葉かな

サラダ菜を綺麗に並べ神の留守

手のひらのどんぐりなでて主は来ませり

 

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